5. 環境保全と循環型社会を指向した機能材料の設計

5.1.水環境資源・有価金属リサイクルに関わる共同研究 

 世界的に環境保全の機運が高まる中で、水質汚濁防止法の強化やPRTR法の施行など事業活動等から発生する廃液・排水に対しては、より一層厳しい水質浄化の義務が課せられる方向に有ります。近年は、大学や研究所等で使用される化学物質も更に多種多様化しており、廃棄処理される有機・無機廃液の種類・量の増加が顕著に見られます。しかし、有機廃液中には合成時に使用した遷移金属錯体や貴金属・希土類元素等も含まれている場合が少なく有りません。これらは、廃液の焼却・熱分解処理工程において難処理化を引き起こすだけでなく、有価金属のリサイクル・省資源の観点から極めて非効率的な処理を強いられています。

 近年、循環型社会の構築が叫ばれ、再資源化や環境負荷の低減化に対するアプローチが望まれる中、我々の研究環境から排出される廃液・排水に対しても、有効且つ効率的な保全管理と再資源化への積極的な対応が必要と考えています。

 様々な化合物の混在する有機廃液から特定の有価金属を選択的に分離回収するためには、特定の金属を選択的に認識・分離できる新材料の設計・開発及びそれらの利用条件の確立が重要となります。


 我々は、新しい配位子の分子設計という観点から、特定の有害重金属・有価金属を認識・分離回収できるような新材料・素材の開発を進めています。これらの研究については、富山大学大学院環境応用化学専攻(機能分子化学研究室)との共同研究により、材料の特性解析・選択的分離回収法の開発について研究を展開しています。また、高分子配位子・高分子錯体触媒の開発の観点からは、分離回収並びにリサイクル性の高い均一系錯体触媒の構築について研究を進めています

 その他、プラスチック製容器包装廃棄物の再商品化を指向したプラスチックのケミカルリサイクルに係わる基礎研究を進めています。

選択的認識・分離機能を有するポリアミン
ポリチオアミドを用いる廃液からの重金属分離回収

重金属分析用蛍光性薄膜

均一系錯体触媒の分離回収・リサイクル
(ACS Web
における紹介記事)
高分子半導体を光触媒とする廃水の浄化

環境科学関連材料に関する研究に興味のある方は2.錯体触媒3.光触媒の研究項目もご覧下さい。

1.機能性高分子にも関連項目ができました。

環境負荷の少ない機能性高分子合成法の開発01
環境負荷の少ない機能性高分子合成法の開発02

高分子半導体のワンポット合成 
不活性ガス雰囲気を必要としない簡便な高分子半導体の合成 
反応性官能基を使わない高分子半導体の合成 


5.2.藻類バイオマスに関わる共同研究 

 光合成によって増殖する紅涙が生み出す油成分は、石油などの科学燃料の代替(バイオ燃料)として高い生産性が注目されています。筑波大では生命環境系のグループが石油代替の良質な油を産生する研究を精力的に進めており、2015年には「藻類バイオマス・エネルギーシステム開発研究センター」が設立しました。 

我々は、この生命環境系グループが先導してきた藻類産生オイルの研究を、新たに高分子化学・触媒化学と融合させて、新しいバイオプラスチックを創出する研究を進めています。 




藻類産生オイルと硫黄の逆加硫化反応
 


研究内容

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