貴金属の選択的分離回収が可能な高分子配位子の開発
（本研究は富山大学工学部物質生命システム工学科加賀谷研究室・水質保全センターとの共同研究によって進められています）
最近、地球環境保全や廃棄物処理に関する関心は飛躍的に高まっています。それに伴って大学や研究所等から廃棄処理される有機・無機廃液の種類・量も顕著な増加傾向にあります。しかし、それらの廃液・排水中には、合成時に使用した遷移金属錯体や貴金属・希土類元素等が含まれている場合も少なく有りません。それらは、廃液の焼却・熱分解処理工程において難処理化を引き起こすだけでなく、有価金属のリサイクル・省資源の観点からも極めて非効率的と思われます。
排水・廃液中から有害重金属や有価金属を選択的に分離回収するためには、
1) 特定の金属を選択的に認識・相互作用するような材料の開発
2) 特定の金属を選択的に分離回収するための分離・処理条件の確立
が重要です。
我々は、配位子の高次構造制御という観点から、特定の金属に対して選択的な配位能力を有する高分子配位子の分子設計・開発を行っています。最近、代表的なキレート配位子の１つである2,2'-dipyridylamine骨格を高分子化することにより、金に対して選択的な吸着特性を有するキレート樹脂が得られることがわかってきました。この樹脂の合成ではPd錯体触媒を用いる炭素−窒素結合生成反応を重縮合及び高分子反応に適用しています。
Fig. Recovery of some metal ions by Polymer-1, 2 and 3.
この樹脂は、Cu, Ru, Pd, Pt等の遷移金属共存下においても選択的にAuを吸着・分離することが可能であることから、今後、排水中から有価貴金属である金を選択的に分離回収する処理技術の開発が期待されます。
