図1 Ti-Ta系高温形状記憶合金インゴットの冷間圧延前後の様子
自動車、発電、家電製品、航空宇宙分野などで、100℃以上で作動する高温形状記憶合金が求められています。Ti-Ni合金は、幅広い分野で利用されていますがその作動温度は100℃以下であり、高温形状記憶合金として使用することは困難です。
従来のTi-Ni系高温形状記憶合金は加工性に劣ることが問題点でした。私達の研究班では、高温形状記憶合金としてTi-Ni系合金にかわる新しい合金系の開発を目指しました。我々が着目したのは、β型Ti基形状記憶合金です。β型Ti基形状記憶合金は、もともと生体用として研究を進めてきたNiを含んでいない合金です。この合金は中間焼鈍をせずに90%以上の冷間圧延が可能なほど加工性に極めて優れていることが特徴です。図1は我々が開発した合金における冷間圧延前後の様子を示しています。
β型Ti基形状記憶合金にはTi-Nb系、Ti-Mo系、Ti-Ta系合金などが挙げられ、合金の組成によって形状回復温度を100℃以上にすることができます。我々はこの中でもTi-Ta系合金が熱安定性に優れていることを見出しました。現在はTi-Ta系合金において更なる熱安定性と形状記憶特性の改善に取り組んでいます。