化学的エネルギーを運動エネルギーに変換して駆動するマイクロ/ナノモータの構築
-細胞輸送・分離機能の付与-
我々生命体中には、ATP合成酵素に代表されるナノスケールで物質変換等の機械的仕事を行う様々な分子機構が存在し、高度で複雑な生命現象を支えています。このような、いわゆる天然のナノマシンに匹敵する素子を人工的に構築することができれば、細胞工学や材料工学における有用なツールとなるのみならず、ひいては生命機構のより深い理解につながると期待されます。近年、こうした機能性ナノデバイス創製の試みが盛んになされており、環境中の電気化学ポテンシャルを駆動エネルギーとして、溶液中を「泳ぐ」金/白金(Au/Pt)マイクロモータ
(1)はその一例です。
本研究では、溶液中で駆動する人工マイクロ/ナノモータに様々な機能を付与することで、バイオツールとして用いることのできるマイクロ/ナノデバイスの構築を目指しています。
参考文献
(1) J. Wang, W. Gao,
ACS Nano,
6, 5745-5751 (2012)
外部的な装置・操作を必要としない細胞マニピュレーション技術の構築を目指し、自己駆動型マイクロモータの特長を活かして、自発的に細胞輸送・脱離を行えるシステムの構築を行っています。マイクロモータは亜鉛と白金の接合体から構成されています(図1)。化学修飾されたマイクロモータによるターゲットの捕獲と、亜鉛の強い還元力を利用した化学結合の切断によるターゲットの脱離を行わせることができます
図1:亜鉛/白金マイクロモータの模式図と駆動メカニズム