237Np 原子核は電気四極子をもつため、分子や固体において電場勾配(EFG)との相互作用を通してその周辺の電子分布について有益な情報を与えてくれます。強磁性体として知られる窒化ネプツニウムにおいては、孤立 Np3+イオンにおける負の EFG とは対照的に、正の EFG が実験的に観測されていました。FFCLAO 法による第一原理計算を行ったところ、この事実をうまく説明できることがわかりました。
ウランモノカルコゲナイドにける軌道磁気モーメントの値は、総和則をもちいて実験的に見積もられています。そこで、FFCLAO 法による第一原理計算によって XMCD スペクトルを計算し、総和則の有効性を理論的な観点から調べることも重要であると考えられます。解析の結果、総和則による軌道磁気モーメントの計算値と通常の方法による軌道磁気モーメントの計算値はある程度の精度で一致することがわかりました。
ウランモノカルコゲナイドにおける磁気モーメントの実験値と計算値の間には大きな食い違いがあることが知られています。この食い違いの可能性として、従来もちいられてきた軌道磁気モーメントの計算方法に大きな誤差があることが考えられます。そこで、磁気モーメントの本来の定義に戻って、Dirac 電流と位置ベクトルの外積に基づく計算を FFLCAO 法によって行いました。その結果、磁気モーメントの計算値が大きく改善されることがわかりました。
ウランモノカルコゲナイドの磁気モーメントの計算値は Dirac 電流をもちいた方法により大きく改善はされましたが、依然として実験値とのかなり大きな食い違いは残りました。その原因が第一原理計算で採用されている汎関数の形に依存しているかどうかを FFCALO 法により調べました。その結果、構造、弾性的的性質、凝集エネルギーについては大きな依存性がみられるものの、磁気モーメントについてはほとんど変化がみられないことがわかりました。