3成分重縮合によるポリチオアミドの合成

―新しい機能材料の開発を目指して―


 ナイロンやポリアミノ酸のようなポリアミドは以前から多彩な構造のものが合成され、広範な研究がなされています。これに対し、アミドの酸素原子が硫黄原子に置き換わったポリチオアミドの研究はこれまでに研究例が少なく、未知数な点の多い素材です。これは、既報のポリチオアミドの合成ではモノマーの合成が煩雑であること、また、脱離成分として生成するメタンチオール等の有毒性がポリチオアミドの研究を制限していたものと考えられます。


私たちは、古くから知られている人名反応でもありますWillgerodt-Kindler反応に着目してポリチオアミドの合成とそれらの応用研究について検討を進めています。

この重合方法は、硫黄存在下、各種ジアルデヒドとジアミンの3成分を1段階でさせ、ポリマーを得る比較的例のない重縮合であり、入手容易な原料から比較的簡単に種々のポリチオアミドを効率よく得ることができます。また、この反応では脱離成分は水であり、有毒なメタンチオールの生成は見られません。

ポリアミドは、強い分子間水素結合によりほとんどのものが一般の有機溶媒に不溶性なのに対して、対応する構造のポリチオアミドは極性有機溶媒に可溶であり、透明なキャストフィルムが作成可能です。また、硫黄原子の存在により遷移金属への配位特性が見られます。今後このようなチオアミドの特徴を生かした機能性高分子への展開が期待されます。

研究内容

TOP