マイクロ波加熱を利用した直接アリール化重縮合反応の効率化
我々は最近,π共役高分子を合成するための新しい重縮合反応を開発しています.開発中の合成反応では,従来から利用されてきたクロスカップリング反応ではなく,C-H結合を反応点として結合形成を行う直接アリール化反応を用いる点がポイントです.この方法には,出発原料の合成が簡単になり,副生成物の量が削減できるなどの利点があります.
今回,この手法にマイクロ波加熱を適応することで,さらなる高効率化を目指しました.利用したマイクロ波加熱は,一般に用いられている電子レンジと同じ原理に基づいています.有機合成や高分子合成の分野においては,マイクロ波加熱を用いると瞬時に均質な加熱が可能になるため,反応を効率化することが可能になります.
エチレンジオキシチオフェンとフルオレン骨格を有する高分子の合成を対象にして,三種類の合成方法を検討,比較しました.@
従来法であるクロスカップリングを用いた手法では,分子量 17000の高分子が収率85%で得られました.A 一方で直接アリール化反応を利用した重縮合では,分子量は 48000にまで向上しました (収率 85%).B さらに,この直接アリール化重縮合とマイクロ波加熱を組み合わせたところ,得られる高分子の分子量が 147000に達しました(収率 89%).この分子量は,π共役高分子としては非常に高い値です.さらに、従来法に比べて,触媒や反応時間を短縮することができていることから,有用な合成手法だと言えます.
検討した三種類の合成手法@,A,およびB
|
結合形成法 |
加熱方法 |
反応時間 |
収率 |
分子量 |
@ |
鈴木カップリング |
オイルバス |
48 時間 |
85% |
17 000 |
A |
直接アリール化反応 |
オイルバス |
6 時間 |
85% |
48 000 |
B |
直接アリール化反応 |
マイクロ波 |
0.5 時間 |
89% |
147 000 |