環状チオアミドの包接機能(2)

―新しい分子集合体の構築を目指して―

 最近、非共有結合性相互作用を基本として自発的に安定な秩序構造・分子集合体を形成させ、特異的な特性発現を指向したナノマテリアルの研究が盛んに進められています。ロタキサン(rotaxanes)はラテン語のrota(wheel)axis(axle)に由来した名称で輪と軸から構成される分子です。輪は軸上を自由に運動することができるため、その動きを利用した分子スイッチや分子シャトルなどへの利用が研究されています。

 私達は、最近、チオアミド基を有する環状包接化合物を利用した新しい分子集合体の構築について研究を進めています。アミド基の酸素原子を同族原子の硫黄原子に置き換えたチオアミド基は、アミド基に比べて N-H基の陽子供与性が高まることから、それらを環状化合物の内孔に集約することによって陽子受容性有機分子に対する包接能が向上します。


この性質を利用して、最近、新しい擬ロタキサンの水素結合性相互作用及び結晶構造を明らかにしました。



擬ロタキサンのX線結晶構造解析の例


 擬ロタキサンは軸分子がストッパーとなる置換基を持たないため、通常、電荷を持たない分子では単離・構造解析は難しいようです。上記の擬ロタキサンはチオアミドの高い陽子供与性によって安定に単離することができます。また、ストッパーを持たないため、アニオンの添加等によって軸分子を簡単に取り外すことができます。

 今後、さらに環構造並びに軸分子の幾何配置の最適化を図ることによって新しいドラッグ・デリバリーシステムや新規なトポロジーを有するポリロタキサンの構築などが期待されます。

研究内容

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