環状チオアミドの包接機能

―新しいアニオンレセプターの構築と機能評価―


 細胞内に存在する受容体(レセプター)が薬物や刺激などを認識する過程は、きわめて精巧なホスト・ゲスト相互作用に起因していると考えられています。細胞内外のイオンを透過させる通孔を持つ膜タンパク質(イオンチャンネル)中では、レセプターの選択的なイオン識別機能が寄与しています。一方、近年の超分子化学の発展に伴い、選択的な陰イオン認識能を有する人工レセプターの研究が、国内外で活発に進められています。それらの中にはアミド基やピロールユニットの水素結合性相互作用を利用したものがあります。

 私達は、最近、チオアミド基を利用した環状包接化合物の調製とそのアニオンレセプターとしての機能について検討を進めています。




 アミド基の酸素原子を同族原子の硫黄原子に置き換えたチオアミド基は、アミド基に比べて N-H基の陽子供与性が高まることから、それらを環状化合物の内孔に集約することによりレセプターのアニオン包接機能が向上することが分かってきました。



環状チオアミドのX線結晶構造解析の例(DMSO分子を含む結晶)



Cl を取り込んだ環状チオアミドのX線結晶構造解析の例

 今後、さらに環サイズ並びに陽子供与性基(チオアミド基)の幾何配置の最適化を図ることによって選択的な陽子受容体(ゲストイオン・分子)の包接機能向上が期待されます。

研究内容

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