金属を含まず金属調光沢を示す高分子色素の開発


 滑らかな金属の表面は光を反射する性質があり、その様子は一般的に金属光沢と呼ばれています。これは金属の自由電子と入射した光の相互作用によって発現するものです。鮮やかな金属光沢は、高級感のある加飾として多くの用途で用いられています。一方、代表的な金属光沢の加飾方法であるメッキ処理では多量の重金属を含む廃液の処理が必要となるため、近年、環境負荷低減化の観点から重金属フリーの加飾材料の開発が望まれています。最近、我々のグループでは、金属を含まない高分子材料で金属光沢に似た光の反射もつものを見出しました。

 アニリン誘導体とBr基を二つ有するアゾベンゼンをPd触媒存在下で重合すると、式に示すような高分子が得られます。このポリマーは色素によく見られるアミノアゾベンゼン骨格を主鎖に有しており、高分子色素とみなすことができます。


 このポリマーは、溶液状態や薄い膜の状態では赤色を呈します。これに対して厚い膜を作成すると、緑色の金属光沢が観測されました。ここで観測された光沢は、吸収スペクトルや反射スペクトルなどを利用して評価を行いました。

吸収スペクトル(赤)と反射スペクトル(緑)


このように、金属を含まないにも関らず金属のような光沢を示す興味深い現象を発見しました。このポリマーは、高度な積層技術などは必要とせず、単純なキャストやコーティングによって金属調光沢を創り出すことができます。現在、この光沢が発現する要因について検討を行っています。

研究内容

TOP