水素結合を利用したDNA模倣分子の開発
生命活動を司る生体分子には触媒機能や情報保持能力などの驚くべき機能が備わっています。そういった高度な機能を発現する生体分子の構造を模倣することで、オリジナルと同じような機能や、または全く新しい機能の発現が期待できます。当研究室では遺伝情報を司るDNAに着目し、その構造を模倣した分子を創り出すことで、高度な機能性分子の開発を目指しています。
DNAは、デオキシヌクレオチドがリン酸ジエステル結合で連結した高分子です。我々は共有結合であるリン酸ジエステル結合を、非共有結合性の相互作用である水素結合に置き換えることでDNAを模倣した分子の合成を行いました。水素結合で連結することで、自由かつ可逆な構造変化が期待できます。
デオキシヌクレオチド自身も水素結合を形成することが知られているため、連結部位の水素結合と区別できるように分子を設計してあります。以下に示した化合物を合成し、単結晶X線構造解析を用いて構造を確認したところ、期待したように水素結合によってデオキシヌクレオチドが連結された構造をとっていることが分かりました。
ポリペプチドは水素結合などによって、タンパク質のような複雑な構造体を自発的に形成します。今回合成した分子も、水素結合によって連結されていることから、天然のDNAと強く相互作用するなど、新しい機能の発現が期待できます。今後は水素結合の強さや分子構造を調節することで生体分子を自在に連結し、機能発現へとつなげることを目指します。
