新しいジケトピロロピロール(DPP)の開発


機能性色素の一つであるジケトピロロピロール(DPP)は、これまで自動車の赤色の塗料などに使われてきました。しかし最近では、その高い蛍光量子収率や吸光係数が注目され、色素レーザーや太陽電池などに応用されています。しかしその合成法は限られているため、新しいDPP誘導体の合成方法の開発が望まれていました。そのため今回の研究では、有機金属触媒による反応を鍵段階として、安価な原料から様々なDPP誘導体を合成する手法の開発を行いました。条件検討の結果、Pd触媒を用いることによって各種誘導体を高収率かつ短い反応ステップで合成することができるようになりました(1)。この手法は、これまでの手法では困難であったアミノ基の導入が容易に行える点に特徴があります。

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得られたDPP誘導体は、高い発光効率(Φ=0.86-0.91)を有していることが明らかになりました(1)。さらに、その極大発光波長は導入した置換基に依存して、置換基の電子供与能が強いほど長波長に存在します(1 < 2 3 < 4)。また、電気化学測定においても置換基とDPPコア部の酸化還元に相関があることが分かり、様々な置換基を導入する手法を見いだすことで、系統的な置換基効果を明らかにすることができました。さらに、DPPコアの電子状態が芳香環上の置換基によって変化することは、DFT計算からも確認を行いました。

図1 化合物1-4の溶液状態での発光


溶液状態の化合物4にトリフルオロ酢酸(TFA)を加えると燈色の発光が消え、さらに過剰のTFA加えると黄色の発光が再び観察されるという現象が観測されました。これは化合物4の窒素原子への二段階のプロトン付加に由来することを、滴定実験などから確認しました。さらにこの現象を応用することで、気体状態の酸の強さを検知するセンサーが構築できます。最適化の結果、化合物4をシリカゲル上に担持すると、弱酸であるギ酸の蒸気にさらすと発光が減少し、強酸であるTFAの蒸気にさらすと発光色が黄色に変わることが分かりました(2)。さらにアンモニア蒸気にさらすと元の燈色に戻ることから、繰り返しの使用することもできます。

2 (a)薄層シリカゲルプレート上に誘導体4を担持し、UVライトを当てた際の様子 (b)ギ酸蒸気と接触時の様子 (c)TFA蒸気と接触時の様子.


研究内容

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