環境調和型錯体触媒の設計　　―触媒機能向上を目指した配位子設計―

　我々は、これまでにRu錯体触媒に適切なシクロメタル化配位子を導入することで、大気中の酸素を利用したイミダゾリン類の酸化反応が効率よく進行し、対応するイミダゾール類が高収率で得られることを見出しています。また、この触媒は、Ruに対して配位性のある各種アミン類やアルコール類を基質として用いた酸素酸化触媒反応にも適用できることを確認しました。

　この錯体触媒は、シクロメタル化配位子の強いσドナー性によって中心金属の酸素酸化反応が促進されているものと考えられます。そこで、シクロメタル化配位子に化学修飾を行って中心金属の酸化還元電位を任意に制御・設定し、配位子のσドナー性と触媒活性の相関を明らかにすることにしました。

シクロメタル化配位子に電子供与性基・電子吸引性基を導入したRu錯体を合成して、2-フェニルイミダゾリンを基質とした酸化的脱水素化反応を行いました。その結果、中心金属の酸化還元電位を下げることによって触媒反応は高効率化されることが確認されました。さらに、電子供与性基を導入したRu錯体では、室温・大気中でも反応は効率よく進行することが明らかになりました。

　今後はさらに種々の配位子設計を進め、高活性な環境調和型錯体触媒の分子設計指針の確立を目指します。

研究内容

ＴＯＰ