環境調和型錯体触媒の設計

―大気中酸素を利用した酸化反応―


 近年、環境負荷低減化や安全性確保の観点から、従来用いられてきた毒性・爆発性の高い含重金属酸化剤に代わる酸化剤として酸素が注目されています。"クリーン"かつ"グリーン"な酸化剤として大気中酸素を活用することで、コストの削減や副生成物が水のみとなるなどの利点があります。そのため、酸素酸化反応のための触媒開発が盛んに進められています。


 遷移金属錯体は中心金属と配位子となる有機化合物を選択することで様々な分子設計を行うことができ、高活性な触媒となる可能性があります。私達は、シクロメタル化されたルテニウム錯体を錯体触媒として用いることで、温和な条件下イミダゾリンの酸素酸化反応が進行し、工業的にも有用なイミダゾールへと変換できることを見出しました。さらにこの
2電子・2プロトンの脱離を伴う反応を、4電子・4プロトンの脱離が必要な反応へと展開し、ベンジルアミンから医薬品などの合成中間体となるベンゾニトリルへと変換することができました。




 また、新たにシクロメタル化配位子としてベンゾ[h]キノリンを有するルテニウム錯体を設計・合成しました。このルテニウム錯体も期待通り、酸素酸化反応の触媒となることが明らかになりました。



 

 今後は種々の配位子設計を行い、分子設計と触媒機能の関係を系統的に明らかにすることで、さらに高度な環境調和型錯体触媒の設計を目指します。


研究内容

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