新しい分子集合体の構築を目指した環状包接化合物の分子設計
―遷移金属錯体触媒を用いるアザカリックスピリジンの調製―


 細胞中のレセプターが示す優れた分子認識能は本質的にきわめて精巧なホスト・ゲスト相互作用に起因していると考えられます。人工ホストの分子設計においても、ゲスト分子の構造に応じた最適化がなされれば、高度な分子認識能の発現が期待されます。

 私たちは、遷移金属錯体用いる触媒反応に基づく大環状化合物の調製という観点から、新しい骨格からなる包接錯体・包接化合物の分子設計・構築を進めています。そして最近、金属に配位可能なピリジンを基本骨格とする新しい環状化合物であるアザカリックスピリジン類が得られました。



アザカリックス[6]ピリジンの分子構造

 アザカリックスピリジンは環状構造内にドナー性の窒素原子が集約されていて、いわゆるルイス塩基の塊のような化合物です。その一方で、環状構造形成によって配位サイトの空間的配置が制限されています。これらの特異的な配位環境は、選択的な分子認識能の発現や特殊な配位形態からなる金属錯体や包接錯体の構築を期待させます。




アザカリックス[4]ピリジン亜鉛錯体の分子構造

 生体内の金属酵素は、アロステリック効果で見られるように、様々なコンホメーションを取ることによって特定の機能を効率良く発現させています。アザカリックスピリジンを配位子として使って配位座の空間的配置を制御することによって、金属酵素のような基質特異的な機能を持つ遷移金属錯体の構築が可能となるかもしれません。さらに今後の分子設計において、複数の配位座を適切に立体配置することで新規の分子集合体・超分子の形成に対して新たな指針を提供できるものと思われます。


研究内容

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