分子内水素結合を利用した環状化合物の構築

―反応性を有する新規アザシクロファンの設計―

 カリックスアレーン(シクロファン)はクラウンエーテルやシクロデキストリンとともに包接化合物の基幹物質として数多く研究されている環状化合物です(1)。私たちは、新しい骨格からなる包接錯体・包接化合物の分子設計・構築という観点から、架橋基にアミノ基を有するアザシクロファン(アザカリックスアレーン)について研究を進めています(参考)。

 
  シクロファン チアシクロファン アザシクロファン

 架橋基に2級アミノ基を導入した場合、その反応性を利用して種々の官能基を導入することが可能となり、環状化合物のコンホメーションの制御や新しい機能の付与が期待できます。

 最近の研究から、環形成反応過程において分子内水素結合を利用することにより架橋基に2級アミノ基を有するアザシクロファンが構築できることが分かりました。

 

 これまでの研究から、1,3-フェニレンジアミンと1,3-ジハロゲン化ベンゼンの縮合反応ではポリマー(poly(m-aniline))は合成できますが、環状化合物は得られませんでした(反応式(1))。これに対して、反応式(2)にあるように、アルコキシ基とアミノ基の分子内水素結合を利用することにより中間体が環形成に適したコンホメーションに制御されますと、新規のアザシクロファンが効率よく生成します。

 
反応中間体および生成したアザシクロファンの分子構造 

 得られたアザシクロファンは架橋基に2級アミノ基を持つため、種々の反応によって多彩な誘導体を与えることができます。今後は、この架橋基の反応性を利用して各種金属イオンや光学活性分子などを選択的に包接、識別し得る様々な誘導体の分子設計・構築が期待されます。

 


(注
1)カリックスアレーンは、その構造的な特徴、すなわち、(1)フェノール環員数を変えることにより、空孔サイズの異なる化合物を合成できる、(2)フェノール性水酸基を利用して種々の官能基を導入できる、(3)芳香族置換反応により種々の官能基を導入できる、(4)コンホメーションを制御できる、などに基づいて国内外で精力的な研究が進められています。

研究内容

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