1-2. D-A型導電性高分子の分子設計と機能開発


 ポリアセチレンが化学的ドーピングによって導電性を発現することが見い出されて以来(白川英樹本学名誉教授はこの業績に基づき2000年のノーベル化学賞を受賞されました)、導電性高分子の研究は国内外で精力的に展開されています。

 導電性ポリマーを導電化するドーピングにはp型ドーピングとn型ドーピングがあります。p型ドーピングは電子受容体(アクセプター)との反応、n型ドーピングは電子供与体(ドナー)との反応で、それぞれポリマー主鎖中に正もしくは負のキャリア(ホールもしくは電子)が生じ、導電性高分子として機能します。

 ドーピング反応の起こりやすさは、ポリマーを構成する単位ユニットのイオン化ポテンシャルもしくは電子親和力と密接な関係が有り、p型ドーピング(酸化)とn型ドーピング(還元)によって、それぞれp型導電体、n型導電体へと変換されます(n型導電性高分子の項を参照)。


 一方、チオフェンのようなπ電子過剰系複素環ユニット(ドナー)とキノキサリンのようなπ電子欠如系複素環ユニット(アクセプター)を連結した交互共重合体はp型ドーピング、n型ドーピングいずれにおいても導電性が発現することから、p型n型両導電性高分子として機能します。


 D−A型交互共重合体は、ドナーとアクセプターが主鎖中で規則的な結合を形成していることから、ユニット間での電荷移動がπ共役鎖を介して主鎖全体に広がった電荷移動型π共役系を形成します。このようなポリマー中の分子内電荷移動は、ポリマーの紫外−可視吸収スペクトルを測定することで確認することができ、ホモポリマーよりもさらに低エネルギー領域に電荷移動遷移(CT遷移)に基づく新たな吸収帯が観測されます。そのため、これらの交互共重合体はバンドギャップ(Eg)の小さいπ共役ポリマーとして、その電気的・光学的特性に興味が持たれています。

 D−A型交互共重合体は、主に右田−小杉−Stille反応鈴木−宮浦反応などのクロスカップリング反応に基づく有機金属重縮合によって比較的容易に合成することができることから、近年、多彩なD−A型交互共重合体の開発が展開されています。


研究内容

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